【観察眼】演出される危機と置き去りの課題

CGTN

最近、日本のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」に掲載されていたある求人広告がSNS上で大きな注目を集めた。

「日本称賛系、技術系、中国批判系など海外の反応YouTube動画の編集のお仕事 1本2,000〜4,000円」

その露骨すぎる文面が話題となった。

この求人が注目された背景には、特定の言説や感情を誘導するような「扇動動画」が、外注という形で広く流通していた実態が可視化されたことにある。しかも、わずか数千円という単価だ。求人の発注元は、デジタルコンテンツ制作会社「ダブルレインボー株式会社」。依頼内容には、台本作成、素材収集、編集といった作業が細かく指定されていた。視聴者の反応までも想定した「感情の設計図」が外注化されている実態が浮かび上がる。言い換えれば、感情が単価化され、特定の立場や言説までもが商品として流通しているーーそんな現実が浮かび上がる。

▲クラウドワークスに掲載された求人記事のスクショ画面

投稿にはさまざまな反応が寄せられた。

「最近、『外国人が日本を絶賛』や『中国を批判』とかの動画がやたら多い理由が分かった。流行ではなく業務だったのか」と指摘する声。「ある政治家の支持率も、民意ではなく予算で作られているのでは」と皮肉る投稿もあった。

もちろん、これだけで特定の政治勢力の関与を断定することはできない。しかし、ネット上の「世論」が必ずしも自然発生的ではなく、意図的に設計された感情が流通している可能性は否定できない。

議論が広がるなか、SNS上では、ナチス・ドイツの空軍元帥ヘルマン・ゲーリングの言葉を引用する投稿も拡散されていた。

「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし、国民を戦争に参加させるのは常に簡単だ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けると非難し、国を危険にさらしていると主張すればよい。この方法はどんな国でも有効だ」(ギルバート著『ニュルンベルク日記』より)

というものだ。

この言葉が不気味なのは、過去の遺物であるからではない。同じ論法が、現代においても容易に再利用され得る点にある。

現実に目を向ければ、日本が直面する構造的な課題は山積したままだ。厚生労働省の調査では、相対的貧困率は約15%。世界銀行などのデータでも、日本のジニ係数(所得などの分布の不平等度を示す指標)は0.32前後で推移し、所得格差の拡大傾向は続いている。さらに政府債務はGDPの2倍を超え、主要先進国の中でも最も深刻な水準にある。将来世代の予算はすでに食い減らされつつある。

本来、こうした課題こそ丁寧に議論されるべきだ。ところが、近年の政治言説では、「外部の脅威」「安全保障」「戦時意識」といった言葉が前面に押し出され、国内の問題はしばしば後景に退けられてしまう。危機の矛先を外側に向けることで、内側の困難が一時的に見えにくくなる構図である。

歴史を振り返れば、戦争を煽る者が自ら前線に立つことはほとんどない。戦争を経験していない世代にとってより危険なのは、「大きな戦争の声」そのものではなく、戦争という選択肢が日常に紛れ込み、違和感を失っていくことだ。

世論は買うことができ、怒りは編集できるのかもしれない。しかし、その代償を最終的に負うのは、感情を操る側ではなく、その社会で暮らす市民である。(CMG日本語部論説員)

12-04 19:16

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