2026年政府活動報告&「十五五」計画を読み解く③ 東京大学・丸川知雄教授がみる「中国の内需拡大」

CGTN

2026年は中国にとって、国民経済と社会発展に関する第14次五カ年計画(「十四五」)が終了し、第15次五カ年計画(「十五五」)が始まる節目の年となる。この春、北京で開かれた第14期全国人民代表大会(全人代)第4回会議の「政府活動報告」と「十五五」計画綱要をめぐり、日本の有識者に話を聞いていく。

本シリーズ第3回のゲストは東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授。中国が直面する構造的課題や、今後の成長の可能性について話を聞いた。

東京大学社会・丸川知雄教授

■内需拡大という「戦略的基盤」に注目

丸川教授は今年の政府活動報告の最も注目すべきポイントとして「内需拡大」を挙げた。

政府活動報告は、「複雑かつ厳しさを増す外部環境下において、内需拡大という戦略的基盤を堅持しなければならない」とし、内需拡大を「重大戦略任務」の一つに位置づけている。実際、内需拡大は2024年から3年連続で政府活動の重点課題の筆頭に掲げられている。

また、報告には「下沈市場(中小都市や農村部を指す)の消費活力喚起」の内容も盛り込まれた。

これらの施策について、丸川教授は「良い方向に向かっている」と評価としたうえで、内需拡大の鍵は低所得層の所得向上にあると指摘する。

「第15次五カ年計画の提案において、社会政策の分野の記述は非常に踏み込んでいた内容になっている。介護保険の全面的な実施、育児手当の拡充、さらに職工年金に加入しない住民、特に農民など幅広い層を対象とした住民年金や医療保障の拡充などが盛り込まれている。これらの政策は低所得層の所得向上と同様の意味を持つ」

重慶市雲陽県栖霞鎮の菜の花まつりに集まる花見客 写真=CFP

丸川教授は昨年、学術休暇を利用して半年間中国(北京・深セン)に滞在しており、その経験も踏まえて次のように語る。

「中国に住んでみて感じたのは、食料品の価格や交通費の安さだ。もし収入水準が日本と同じであれば、中国の実質的な生活水準はかなり高いと感じた。問題は、低所得層の生活水準の向上だ。そこを底上げできるかどうかが、中国が掲げる『2035年までに中程度の先進国に到達する』という目標実現のための重要なポイントになる」

また、世界経済の視点からも次のように指摘する。

「第二次トランプ政権下で保護貿易的傾向が強まる中、中国の国際社会における役割はますます重要になっている。中国はすでに物品貿易額では米国を超える規模になっているが、輸出偏重の構造では世界経済をけん引する力としては不十分だ。中国の超大規模市場が活性化すれば、各国の輸出機会も広がり、世界経済の成長にも貢献することになる」

■都市化が引き続き中国経済を支える

丸川教授が中国滞在中に強く印象を受けたのは、都市部に残る「城中村(都市部の中の村)」と呼ばれる古い住宅地や農村部の老朽住宅の問題だった。

中国の都市では、新しい高層マンションが建設される一方で、室内にトイレがなく公衆トイレを利用する住宅が多く残る「城中村」や老朽化した住宅が依然として存在している。

「こうした人々の生活環境の改善は、大きな消費需要を生み出し、その需要が経済成長に直結する」と、丸川教授は見ている。

政府活動報告でも、「人間第一の新型城鎮化」の方針のもと、「都市更新を高品質に推進し、老朽化した住宅団地や城中村などの改造を着実に進める」と明記された。課題に正面から取り組む中国政府の姿勢が見てとられる。

深圳で城中村の改造の様子。中央が改造前の古いアパート、左奥が改造後のタワーマンション(2025年8月)写真=本人提供

なお、「新型城鎮化」とは、中国の実情に合わせて進められている都市化戦略で、農村戸籍のまま都市部で生活する人々を含めた都市化の推進を意味する。

中国の都市化率は2026年初めの時点で約68%に達している。丸川教授は「日本並みの80%まで上昇する見込みがある」と予測する。

「中国の総人口が14億人であることを考えると、今後も約1億4000万人以上が農村から都市へ移住することになる。この大規模な人口移動は、膨大な住宅需要を生み出し、都市インフラ整備の需要を生み、中国経済の成長を引き続きけん引するだろう」

■環境改善の成果は「大いに誇って良い」

丸川教授が昨年の中国滞在で心を打たれたと話すのが、中国の生態環境改善の取り組みだ。

第14次五カ年計画では、非化石燃料が一次エネルギーに占める割合を2025年までに約20%に引き上げる目標が設定されていたが、今年の政府活動報告によると、その割合はすでに21.7%に達した。

この結果について丸川教授は驚きを示す。

「当初の目標を大幅に上回る、驚くべき進展のスピードだ。次の目標は2030年までにこの割合を25%前後に引き上げることであり、同時に2030年はCO2排出のピークアウトを実現する年と位置づけられているが、私が観察してきた限り、着実に進展している」

環境改善の成果は、生活環境に表れているという。

「2015年ごろの中国ではPM2.5の問題が深刻だった。しかし、昨年半年間北京に住んでみて、靄(もや)がかかったのは2回ほどで青空が見えた日が多かった。晴れた日には遠くの山々が見え、空気の透明度の高さに驚かされた」

オルドスの砂漠に広がるソーラーパネル(2025年10月)写真=本人提供

北京から河北省の承徳・張家口、内蒙古自治区のオルドスへ旅行した際にも、環境の変化を実感したという。

「張家口は昔は木がまばらな荒涼とした山や大地だったが、今では森林に覆われている。オルドスは面積の半分が砂漠で占められているものの、都市周辺では植林がなされ、砂漠地帯にも植物を植えるなどの対策を講じ、砂漠化の拡大を効果的に抑えている」

承徳の避暑山荘から小ポタラ宮(2025年9月)写真=本人提供

こうした変化の背景には、長年にわたる砂漠化対策や生態環境保護への取り組みがあると丸川教授は説明する。

「中国は環境保護に膨大な投資を行ってきただけでなく、制度や法律の整備も進めている。こうした生態環境分野における進歩は、大いに誇って良い成果だと思う」

第15次五カ年計画のスタートを迎えた中国。構造的課題に着実に取り組み、内需主導の成長と持続可能な発展に向けて今後も歩みを進めていく。

(取材・構成:王小燕、校正:梅田謙)

【関連記事】

2026年政府活動報告&「十五五」計画を読み解く②エコノミスト・西村友作教授がみる「中国発イノベーション」

2026年政府活動報告&「十五五」計画を読み解く①NEDO北京代表処・斧宗一郎所長がみる「グリーン転換に取り組む中国」

◆ ◆

記事へのご意見・ご感想は、nihao2180@cri.com.cnまで。件名に【CRIインタビュー係りまで】と記入してください。お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号 中央広播電視総台亜非中心日語部】宛てにお送りください。スマートフォン用アプリ【KANKAN】の【アカウント一覧】にある「KANKANインタビュー」からも直接投稿できます。ダウンロードは下のQRコードから。

03-13 15:31

更多精彩内容请到 KANKAN 查看