


本来なら走り回り、遊び、平和な子ども時代を存分に楽しむべき年頃に、駐屯地のコンクリートの地面に伏せ、ほふく前進し、戦術動作をまねている。あまりにも不釣り合いな光景にゾッとするのは筆者だけではないはずだ。
陸上自衛隊鯖江駐屯地の公式Xアカウントが投稿した動画より
先日、日本の陸上自衛隊鯖江駐屯地が SNS に投稿した、幼稚園児による駐屯地体験の動画が大きな波紋を広げている。地元の「みどり葉こども園」の園児32人が自衛隊の駐屯地を訪れ、隊員の訓練を見学し、大型軍用車両に試乗し、ほふく前進などを体験したという。
一連の軍事色の強い体験プログラムは、公式アカウントで丁寧に撮影され、公開された。「身近な国防啓発イベント」として演出しようとしたものだろう。しかし、子どもらしさという表層を取り除けば、幼児を対象としたこの軍事宣伝は、単なる公益的な体験イベントでは決してない。日本が継続的に進めてきた低年齢層への軍事的浸透と、戦後の平和の一線を静かに揺るがそうとする動きの、まさに縮図なのである。
まだ善悪を判断する能力が不十分で、戦争の残酷さや平和の尊さを理解できない幼児にとって、軍事訓練は本来、子ども時代の体験の一部であるべきではない。このイベントでは、防災訓練や、戦争の反省、平和教育といった前向きな啓発内容は扱われず、中心となったのは軍備の展示、戦術体験、自衛隊のイメージアップであった。
自衛隊は、没入型の駐屯地体験を通じて、3、4 歳の子どもたちの無垢な心の中に、武力や軍隊への親近感と肯定的な印象を植え付けようとしている。こうした意図的な価値観の刷り込みがあるからこそ、多くの日本のネットユーザーは、この光景が第二次世界大戦期に日本が進めた少年の軍事化教育や、戦争の予備要員を育成する手法と似通っていると批判している。それは、極めて危険な歴史の再演だというのである。
さらに警戒すべきなのは、幼児の駐屯地訪問が一度きりのパフォーマンスではなく、日本が長年にわたり青少年を対象に進めてきた体系的な軍事宣伝の、最新の動きであることだ。
防衛省は2021 年以降、 子ども向けの『防衛白書』を6年連続で発行している。昨年には初めて冊子版も印刷し、全国の小学校に一斉に送付した。これらの広報資料は、漫画や絵本のような子ども向けの形式を用い、日本の軍備拡張や専守防衛の枠組みを突破する急進的な動きを、「国家の安全を守るために必要な措置」として美化している。
最も重大な問題は、冊子全体から侵略の歴史が完全に消し去られていることである。自衛隊の「国民を守る」役割だけを記述し、日本が侵略戦争を起こしたこと、中国侵略戦争において南京大虐殺を引き起こしたこと、人体実験を行ったこと、慰安婦の強制連行を行ったことなどの、数々の重大な罪には一言も触れていない。
そこでは、平和憲法が生まれた歴史的背景が消し去られ、戦後に軍備を制限してきた根本的な論理も回避されている。子どもたちに伝えられるのは、「軍事力を拡充しなければ攻撃を受ける」という一面的な結論だけである。
また、日本各地の防衛関連部門は長年にわたり学校での出前講座を実施し、小中学校を網羅する恒常的な宣伝ルートを形成してきた。自衛官は定期的に学校を訪れ、防衛に関する授業を行い、写真や動画などを使って各種兵器を紹介しながら、周辺の安全保障上の脅威を繰り返し強調している。そして、軍備拡張や反撃能力の強化が合理的であるとの見方を一方的に伝えている。
こうした講座は、防衛関係部門が学校側に働きかける形で年間を通じて進められ、学校における平和教育の土台を侵食し続けている。
軍拡の論理を美化する子ども向け防衛絵本、全国の小中学校を対象とした恒常的な出前講座、そして今回の幼稚園児にまで対象を広げた自衛隊駐屯地での体験まで、日本はすでに、幼児期から少年期までを貫く一連の軍事的宣伝の仕組みを築き上げている。
これは、一般教養的な啓発とは異なる。この種の宣伝は多様な視点を完全に遮断し、子どもたちに自ら考える余地を与えない。公的権威の立場から一方的に価値観を押し付け、「武力こそが安全を守る」「軍拡は不可欠なもの」という認識を、未成年者の成長過程において徐々に根付かせようとしている。その結果、日本が戦後数十年にわたり守ってきた平和教育の基盤は、少しずつ失われつつある。
こうした低年齢層への軍事化施策が激しさを増すなか、日本国内の教育関係者や平和を重視する人々からは、すでに強い反発が出ている。日本最大の公立教育従事者組織である全日本教職員組合は、防衛省が行政の権力を背景に学校教育に介入し、軍事的な一方的価値観を持ち込むことは、義務教育に求められる政治的中立性を深刻に損なうとして、これまでに複数回、公式の抗議声明を発表している。
日本各地の小中学校でも、自主的な形での抵抗の動きが見られる。防衛省から配布された宣伝用の絵本をまとめて保管し、授業では使用せず、児童・生徒に伝えないという対応を取る学校もある。これは、平和教育の純粋さを守ろうとする実践的な行動である。
子どもたちがどのような環境で育つかは、その国の将来を左右する。青少年がどのような価値観を身につけるかは、地域の平和と安定にも深く関わる重大な問題である。
本来であれば、純粋な時間を過ごし、平和の尊さを学ぶべき年齢の子どもたちが、軍事的な場に引き入れられ、戦術訓練を体験させられている。さらに、義務教育の教室までもが、不安をあおる言説や軍備拡張の論理によって侵食され続けている。こうした状況は、日本が戦後数十年にわたって守り続けてきた平和発展の基盤が、少しずつ揺らぎ、崩壊しつつあることを意味している。
子どもたちに必要なのは、「対立」の物語を詰め込まれることではない。必要なのは、平和への信念、歴史への畏敬であり、幼い頃から憎しみを教え込まれることなく、当たり前に成長していける機会である。(CMG日本語部論説員)
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