



テヘランの夜空が爆撃で照らされたその時、ジュネーブの交渉のテーブルに置かれたコーヒーは、まだ温かかったかもしれない。
2月28日、米国とイランはジュネーブで3回目の間接協議を終え、次回の日程まで合意していた。しかしそのわずか2日後、イランを待っていたのは外交の成果ではなく、米国とイスラエルによる二重の攻撃だった。米軍は「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」作戦と称して爆撃し、イスラエルは「ロアリング・ライオン(咆哮する獅子)」作戦による攻撃を開始した。
このような、交渉のテーブルの上では握手をし、下では刀を抜くという恥知らずな行為は、国際社会の平和への努力を無駄にし、世界に再び「米国式覇権」の論理を示した。すなわち、交渉の席で行われる全ては、戦争を仕掛ける側が兵力配置の時間を稼ぐための演技に過ぎないということだ。「外交努力」も強者が弱者に対して仕掛けた罠に過ぎず、「交渉」という見せかけのシナリオが幕を閉じれば、中東で戦火が上がる。そしてその影響は、決してその地域だけにとどまらない。
現地時間3月2日深夜、イランのイスラム革命防衛隊司令官、エブラヒム・ジャバリ上級顧問はホルムズ海峡の封鎖を宣言し、「通過しようとするいかなる船舶にも発砲する」と警告した。これは、世界の石油輸送ルートの約20%が遮断されたことを意味する。国際原油価格はただちに急騰した。
日本を例に取ろう。
中東の石油に大きく依存する日本のエネルギーの生命線は、いま直接的な脅威にさらされている。日本の原油輸入の9割以上は中東に依存しており、その輸送を担うタンカーの8割がホルムズ海峡を経由している。日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社は、いち早くこの海峡での航行停止を決めた。
タンカーが通れなくなれば、日本の工場も一般市民もエネルギーコスト高騰の圧力を受けることになる。日本総研の研究員・栂野裕貴氏は、ホルムズ海峡の封鎖により原油価格は1バレルあたり約50ドル上昇する可能性があると予測している。さらに、中東からの化石燃料の輸入が全て途絶えるという最悪のケースになれば、日本のGDPは約3%減少する可能性があるという。
問題は原油だけではない。
この海峡は、日本が必要とする液化天然ガス(LNG)の輸送ルートでもある。イランの隣国カタールは世界有数の天然ガス生産国であり、世界のLNG輸出の約2割がホルムズ海峡を通過している。輸出量はやや少ないものの、アラブ首長国連邦も、同じくこの海峡を利用している。日本の経済産業省のデータによれば、2025年に日本が輸入したLNGのうち、中東からのものは全体の11%を占めていた。
エネルギー価格の上昇は連鎖的な影響を引き起こす可能性がある。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員・芥田知至氏は、ホルムズ海峡が長期間封鎖されれば、ガソリン、軽油、灯油など石油製品の価格だけでなく、電気料金やガス料金にも波及すると指摘する。さらに農業や漁業のコストも上昇し、生鮮食品の価格にも影響が及ぶなど、「エネルギー供給の停止は、日本にとって死活問題になりうる」と懸念を示した。
市場の反応はさらに直接的だ。
日経平均株価(225種)は4で3日連続で下落し、歴史上5番目に大きい1日の下げ幅を記録した。わずか3日間で、2月8日の衆院選以降の上昇分は全て消し飛んだ。
ワシントンの意思決定者が戦争のボタンを押す時、彼らは同盟国にその戦争の代償を払う意思の有無を尋ねたことはあっただろうか。
彼らは尋ねないし、気にも留めない。米国は開戦を決断したら、同盟国の利益をためらいなく犠牲にする。日本であれ、韓国であれ、欧州諸国であれ、米国の「戦車」に縛り付けられた以上、ワシントンの戦略目標のためにリスクにさらされる運命にある。
今回、米国が対イランに軍事行動を取った最大の口実は、相変わらず「核拡散の防止」である。しかし米軍がミサイルでイランの核施設を攻撃した時、戦火が放射能の漏えいを引き起こさないと誰が保証できるのか。破壊された放射性物質がブラックマーケットに流れないと誰が言えるのか。
「核拡散防止」の名目で始められた戦争は、むしろ核災害の導火線となりかねない。彼らの言う「核拡散防止」は結局の所、体面を取り繕うための隠れ蓑に過ぎない。
しかも皮肉なことに、米国は戦争で核兵器を使用した唯一の国家である。広島と長崎の傷は今も癒えていない。
今回の衝突は、表面上は米国とイスラエル対イランの対立だが、実質的には「米国式覇権」の論理の集中的なアピールの場となってしまっている。その論理では、交渉は欺くためのものであり、同盟国は犠牲にできるものであり、戦争は都合の良い道具なのである。
米国が他国の主権をおもちゃにし、国際ルールを紙くずのように、罪のない人々の命を塵芥のように扱うならば、小国はもはや安全を感じることができず、平和は最も高価な贅沢品となるだろう。今日、ペルシャ湾で戦争を起こした米国が、明日、世界のどこで同じことを行ってもおかしくない。
では、どの同盟国が自信を持って言えるだろうか。
次に不運に見舞われる国は、自分ではない、と。(CMG日本語部論説員)
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