サプライチェーン博と日本企業 パナソニック中国北東アジア総代表・中山正春氏:「China for Global」加速の時代へ

KANKANインタビュー

「世界をつなぎ 共に未来をつくる」をテーマに、サプライチェーンの強じん化と世界経済の発展を目的とする第4回中国国際サプライチェーン博覧会(サプライチェーン博)が22~26日の日程で北京で開催された。サプライチェーン博に連続出展をした日本企業の代表に話を聞いた。

初回はパナソニック執行役員で中国北東アジア総代表の中山正春氏だ。

パナソニックは中国で改革開放政策が始まった初期から中国に進出した(当時は松下電器産業)。今回のサプライチェーン博では、「シルバーエコノミー(銀髪経済)」と「AIインフラ」をテーマに掲げ、健康や介護のフルチェーンソリューションと産業基盤を支える諸技術を展示している。

■日中融合を強みに「チャイナスピード」と「チャイナコスト」で競争力を創出

パナソニックは「ヘルスライフ」展示エリアでの自社スペースに、リビング、キッチン、ベッドルーム、バス・トイレの4つの生活空間を再現した。特に注目を集めているのは、高齢者の「睡眠」と「安全」の課題を技術で解決する展示だ。光、温度、空気を連動させて快眠を促す「ヘルスケア空間システム」や、腹部への圧迫をゼロにするスマート電動ベッドなどの製品が来場者の関心を集めている。

中山氏は「日本の高齢化社会で培った知見と、中国のAI・IoT技術を融合できるのが最大の強みです」と胸を張る。

一方で、同じシニア市場であっても、中国と日本とでは違いもあると指摘した。日本では高齢者が自ら商品を選ぶ傾向があるのに対し、中国では購買決定について、子世代など家族の影響力が大きい。中山氏は、中国の消費者について、新技術への受容度が高く、スマート家電や見守りサービスについても「機械に任せることへの抵抗感」よりも「家族の安心や利便性向上」への期待の方が大きいとの分析も示した。

中山氏によると、中国には世界で最も成熟したサプライチェーンがあり、開発から試作、生産までを極めて短期間で終了できる。シニア向け事業では顧客ニーズに応じた改善を継続することが不可欠であり、市場の変化を商品開発に迅速に反映できる点は大きな武器だ。コストを引き下げることでより多くの人々に健康と介護のソリューションを届けられることを、パナソニック社では「チャイナスピード」と「チャイナコスト」の強みとして捉えている。

■「China for Global」、日中が学び合う双方向のイノベーションへ

展示ブースのキッチン空間には白い炊飯器が置かれていた。蓋を開ければ、日本でよく見かけるフッ素樹脂コーティングの黒い釜ではなく、ステンレス素材の釜が見えた。健康志向の強い中国人消費者の求めに応えるため、中国のサプライチェーンと共同開発した新商品という。昨年発売したところ、中国市場のみならず東南アジアでも好評を博しているとのことだ。

中山氏は「中国市場のニーズを捉え、中国のサプライチェーンを活用して開発した製品が、グローバル市場に貢献する『China for Global(中国で世界のために)』の好事例です」と説明した。

展示会場には、空調、換気、加湿などを統合した「6恒気候システム」を剥き出しの状態で見せる一角もあった。空気の質を改善する日本の技術をベースに、中国のサプライヤーや研究機関との共同開発によって生まれたソリューションだ。

中山氏は、中国で磨き上げたソリューションを日本へ展開する可能性は十分にあるとの考えを示した。

その一例として、中国で実証された睡眠環境の制御や健康データ連携の技術を挙げ、日本の介護施設や高齢者住宅にも大きな価値をもたらすとの考えを示した。

「日本の知見を中国での研究開発に導入し、中国で得たデータを日本の技術改良に還元する」という循環体制こそ、パナソニックだけが有するグローバル連携の強みという。中山氏は、「今後は日中が相互に学び合う双方向のイノベーションをさらに推進したい」と意欲を示した。

■第15次五カ年計画が追い風、中国のパートナーと共創を深める

中国では2026年に第15次五カ年計画(2026~2030年)が始まった。「高齢化社会への対応強化」や「デジタル化・グリーン化の推進」といった方針は、パナソニックの中国でのビジネス活動にとって大きな追い風になったとして、今後は中国のパートナーと共創する機会がさらに広がると中山氏は期待を示した。

スマート養老住宅を例に、パナソニックの立ち位置を「空間設計×製品機器×サービス運営の一体型ソリューションプロバイダー」と定義し、単なる商品販売ではなく、業界全体の発展に貢献したい姿勢でいる。「中国のリーディング企業、業界団体、研究機関と連携体を形成し、パナソニックのシステム統合能力と日本で培った運営ノウハウを、中国独自のスマート住宅基準エコシステムに融合させたい」とのことだ。

■中国の強みをパナソニック全体の競争力向上に

世界的なAI需要の急拡大を背景に、パナソニックは「AIインフラ事業」を新たな成長の柱に据えている。

同社のAIサーバー向け電子回路基板材料の新工場は蘇州と広州で建設が進んでいる。中には、蘇州工場は年末にも稼働開始の見通しだ。建設期間は従前の半分以下に抑えられ、社屋の工事完了から稼働開始までわずか半年だ。「これもチャイナスピードです」と中山氏は微笑んだ。新工場は研究開発、調達、生産、顧客サポートを一体化し、グローバル市場への対応拠点として機能させる狙いと言う。

「AIサーバーには高速大容量のデータ伝送が求められ、高性能基板材料の重要性が増しています。中国には世界有数のICT産業群があり、顧客との距離も近いのです。市場の変化を素早く捉えながら開発生産できることは中国の大きな強みです」と中山氏。需要と技術、サプライチェーンがここに集まっているからこそ、中国を、グローバル競争力を生み出すイノベーション拠点として強化していくという。

現在、中国で3000社以上のサプライヤーと提携しているパナソニック社。中山氏は「中国企業の品質、技術力、納期対応力は大きく向上しており、『日本のものづくり』を支える重要なパートナーです。今後は部品調達だけでなく、設備、自動化技術、AI活用などの分野でも連携を拡大していきます。私どもは『China for Global』をさらに進化させ、中国の強みを世界全体でのパナソニックの競争力向上につなげていきます」と、力強く語った。

(取材:王小燕、梁恵 映像編集:陳木月 校正:鈴木)

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