コラムニスト・本田善彦さん「高市政権の価値観こそが日本を真の『存立危機事態』に陥れる」

CGTN

日本の高市早苗首相の中国関連での誤った言動について議論が広がるなか、ジャーナリストでコラムニストの本田善彦氏は、中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ/CMG)の取材に対し、「高市氏の一連の言動は日本社会の分断と対立を深めている。日本が本当に懸念すべき『存立危機事態』とは、いわゆる『台湾有事』ではなく、むしろ高市政権の価値観そのものにある」と指摘しました。

本田善彦さん

背景にあるのは歴史認識の欠如

本田氏は、就任して間もない高市首相は、本来であれば、政権運営の安定化に努めるべきであり、特に不慣れな外交分野では慎重な言動が求められていたと指摘する。しかし、実際には就任から1か月足らずで、「軽率極まりない発言により、日中間のレッドラインを踏み越え」、もともと極めて脆弱で敏感だった中日関係を深刻に悪化させた。これは、自らの手で日本を危機に陥れたようなものであり、「その『行動の早さ』は、人々の予想を超えていた」と、皮肉を込めて語りました。

高市首相は就任直後の外交活動で、APEC首脳会議に出席し、SNSで2日続けて台湾地区の当局者との面会の様子を写真付きで投稿し、相手を「総統府資政」と呼んだことから、中国側の強い抗議を招きました。また、日本メディアによると、高市首相は「国家安全保障戦略」などのいわゆる「安保三文書」の改定にいち早く着手する意向を示しており、日本が長年堅持してきた「非核三原則」の見直しも視野に入れています。

高市早苗首相(写真:CFP)

本田氏は、高市首相の一連の言動の背景には、敗戦から80年という時間の経過があると指摘します。戦争の記憶が多くの日本人から急速に薄れる中、「日本が安易に『台湾問題』に触れることが、どれほど重大な結果を招く可能性があるのか」を理解できない政治家が増えていると語り、「20世紀末頃までの日本の政治家たちの多くは『台湾問題』の本質について一定の理解があった。彼らには戦争体験があり、日本が敗戦前にアジア諸国で何をしてきたかを知っていたからだ。戦争責任を認め、反省するかどうかは別として、少なくとも歴史を知っていた」と分析しています。

本田氏はさらに、田中角栄元首相の発言を引き合いに出し、「戦争体験者世代が社会の中心にいる限り、日本は安定を保つことができる。しかし、彼らが中心的立場からいなくなったときには、危険な方向へと向かう可能性がある」と語り、「敗戦から80年が経過したいま、日本はまさに田中氏が懸念した方向へと向かいつつある」と警鐘を鳴らしました。

日本は孤立と対立の道を歩むことはできない

本田氏は、少なからぬ日本国民は高市氏の一連の言動を見て、「いわゆる『台湾有事』よりも、高市政権の価値観こそが日本を真の『存立危機事態』へと導くおそれがある」ことに気づき始めていると言います。さらに、「現在、中米関係は安定化を模索し、中韓関係も改善の糸口を探る中、日本だけが同盟国と異なる、孤立と対立への道を進むことができると考えているのか」と疑念を示しました。

一方、11月17日に発表された日本の最新のANN世論調査の結果によると、高市内閣の支持率は67.5%で、先月より8.8ポイント上昇しました。この結果について本田氏は、社会の危機意識が刺激されると、現職の政治指導者や与党の支持率が上がるのは一般的な傾向であり、現段階での内閣支持率の上昇自体は想定の範囲内だとしています。その上で、「問題はこの状態がいつまで続くかだ。今の日本に、現在のような緊張状態を長期にわたって維持できるだけの条件や能力があるとは思えない」と指摘しました。

2025年11月25日、高市発言の撤回を求める抗議者たち(東京)(写真:CFP)

本田氏はさらに、この世論調査の設問を精査し、「台湾周辺で中米間の武力衝突が発生した場合、日本が巻き込まれることを懸念するか」との問いに「懸念する」と答えた回答者は77%、「懸念しない」は14%だった一方で、「日本は集団的自衛権に基づき武力行使すべきか」との問いには、48%の回答者が「必要ない」と答え、「必要がある」と答えた回答者を15ポイントも上回っていると指摘しました。この結果は、一般の日本人の「現実認識」と「行動選択」の間に大きな隔たりがあることを浮き彫りにしていると本田氏は分析しています。

本田氏は、「安全保障の本質は、『危機に際して対処するか否か』ではなく、『いかにして危機が発生しないようにするか』だ」と強調します。その上で、日本国民の課題に対する認識と議論の深化こそが、政府に冷静な判断を促す礎となると述べ、今の日本に必要なのは、「感情的にならずで、理性的に考えることだ」と呼びかけました。(取材・記事:王小燕、校正:鳴海美紀)

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