


最近、国際原油価格が再び上昇している。今回の背景にあるのは単なる需給の変化ではなく、「地政学リスク」という重い現実だ。中東情勢の緊張が高まる中、市場の神経を強く刺激しているのがホルムズ海峡である。この海峡は世界の石油輸送の約2割を担う、いわばエネルギーの大動脈であり、ひとたびリスクが顕在化すれば、影響は価格にとどまらず、エネルギー安全保障そのものに波及する。

とりわけエネルギーを海外に依存する国にとって、その影響はより直接的だ。日本もその一つであり、最近の政策動向からも変化の兆しが見て取れる。日本政府は燃料価格への補助を継続する一方で電力構成の見直しを進め、液化天然ガス(LNG)の供給不安に備え、火力発電の制約を緩和する可能性も議論している。これまでグリーン転換を掲げてきた日本が、現実の局面ではまず安定供給を優先する。このギャップは、エネルギーの対外依存が大きいほど、転換が理想通りには進まないという現実を浮き彫りにしている。
こうした状況を見ていると、数年前のある取材が思い出される。2021年に訪れた内蒙古のクブチ砂漠での太陽光発電プロジェクトだ。広大な太陽光パネルの下には草が生え、そこでは羊が静かに草を食んでいた。現地の担当者は「草刈りの手間がかかるので、羊に食べてもらっているだけです」と、淡々と説明した。しかし、実際にその場に立つと、それが単なる工夫ではないことに気づく。そこには一つの発想の転換があった。発電しながら除草が進み、放牧によって土地に新たな価値が生まれる。パネルが作り出す影が地表環境を改善し、やがて砂地には少しずつ緑が戻っていく。エネルギー、環境、畜産、そして雇用が一つのシステムとして機能していたのだ。

後に調べると、こうした「太陽光発電+治砂+牧畜」を組み合わせたモデルはすでに各地に広がり、単なる発電事業の枠を超えた複合的な産業として発展しつつある。つまり、エネルギーを単独で捉えるのではなく、より大きなシステムの中で設計するという発想だ。
国際情勢の変化によって油価が大きく揺れるたびに、改めて思うことがある。それは、エネルギー安全保障とは、危機が起きたときの対応力ではなく、平時の備えによって決まるものではないかということだ。現時点では、再生可能エネルギーだけですべてを置き換えることは現実的ではなく、石油や天然ガスが依然として不可欠であることに変わりはない。それでも、代替可能な部分から着実に置き換え、依存を分散し、供給の選択肢を増やしていくことはできるはずだ。
こうした取り組みは、平時においては目立たず、回り道のように見えることもある。だが外部環境が揺らいだとき、それは確かな余裕として現れる。あのとき目にした光景――整然と並ぶ太陽光パネルの下で、静かに草を食む羊、そして少しずつ色を変えていく砂地――は、「エネルギー転換」という言葉の意味を極めて具体的に示していた。
世界が再び油価の変動に揺れる今、私の頭に浮かぶのは価格チャートではなく、あの時の風景だ。次の衝撃が訪れたとき、私たちは今よりも落ち着いて向き合えるだろうか。その問いに自信を持って頷ける日が来るとすれば、一見地味で時間のかかる積み重ねこそが、最も現実的で前向きな選択なのだと思う。(CMG日本語部論説員)
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