【観察眼】多国間主義の粘り強さと中国の責任

CGTN

アジア太平洋経済協力(APEC)第32回非公式首脳会議が11月1日、韓国・慶州で「慶州宣言」を採択し、幕を閉じた。今回の宣言は、「世界貿易機関(WTO)を中核とする多角的貿易体制」の重要性に関する表現が初めて完全に削除されたことで、世論の注目を集めている。米国の保護主義がAPECの議題に直接的な影響を与えたものと解釈されている。また、トランプ米大統領が開幕を待たずに帰国の途についたことも、会議の結束力に対する国際世論の疑問を引き起こした。

しかし、「欠席」の一方で、「出席」の熱意も同様に注目に値する。中国、日本を含む大多数のメンバーの首脳が積極的に会議に参加し、期間中に行われた2国間会談は予想をはるかに上回る密度であった。この多角的枠組みに対する重視は、米側の「冷たい対応」と鮮明な対照をなし、アジア太平洋地域における多国間主義の必要性が決して衰えていないことを立証している。

中国は今回の会議において、明確かつ断固たる立場を示し、多国間協力の重要な支えとなった。

習近平国家主席は、アジア太平洋地域の発展に対する不安定・不確実な要素が増している状況の中、「風が強く波が荒いほど、協力して困難を乗り越えるべき」、「手を『離す』のではなく手を『取り合う』こと、サプライチェーンを『断ち切る』のではなく『延長』すること」を堅持すべきだと明確に呼びかけた。彼が提唱した「包摂的で開かれたアジア太平洋経済の共同構築」イニシアチブは、多角的貿易体制の維持、サプライチェーンの安定化などの具体的な提案を含み、幅広い反響を得ている。

国際メディアは、2国間協力を志向する米国とは異なり、中国が今回の会議で、多角的な自由貿易と包摂性・公平さの揺るぎない提唱者としての役割を果たしたと指摘している。もっとも、このような責任感は、中国が一貫して堅持しているものである。今年9月、中国はWTOにおける現在および今後の交渉において新たな特殊かつ差別的待遇(SDT)を求めないことを発表した。この決定は、WTOのイウェアラ事務局長から「中国のリーダーシップを示すもの」と称賛され、行き詰まった多角的貿易体制に活力を吹き込んだと評価された。

こうしたことから、中国がアジア太平洋地域ひいては世界の貿易ガバナンスにおいて、より積極的な役割を果たそうとしているとの国際的な指摘もある。しかし、このような中、一部の日本メディアの論調は極めて耳障りである。彼らは中国の積極的な姿勢を「トランプ氏不在の隙を突いて存在感を高めようとする」行動だと曲解し、「中国が都合のいいように貿易ルールを変えることを防がなければならない」と根拠のない主張を公然と展開している。このような偏った解釈は公平さを欠くばかりか、いくつかの基本的事実を見落としている。

第一に、多角的貿易体制を支持するという中国の立場は一貫しており、WTO加盟以来、常にこの体制を擁護し続けてきた。国際自由貿易システムを守る中国の正当な行為を「主導権争い」と曲解することは、APECが提唱する協力精神そのものに反する。

第二に、中国の開放の成果は明らかであり、関税総水準は過去5年間で9.8%から7.4%に引き下げられ、先進国並みとなった。中国は新たなSDTを求めないと発表すると同時に、他の開発途上国が望むSDT獲得のための支援も積極的に行っている。これは、多角的貿易体制を維持し、改善するための具体的な行動であり、グローバルガバナンスにおける中国のますます重要かつ建設的な役割をはっきりと示している。

第三に、アジア太平洋協力はゼロサムゲームではない。中国はRCEPやCPTPPなどの枠組みにおいて常に包摂的な態度を堅持し、排他的な主導権を求めたことは一度もない。異なる貿易の枠組みは互いに補完し合い、共に発展することが可能であり、いわゆる「中国によるルール変更を阻止する」という問題は始めから存在しない。

現在、アジア太平洋地域で最も必要とされているのはメンバーが協力して多角的貿易体制を維持し、保護主義という課題に共同で対処することであり、互いに猜疑心を抱き、対立を生み出すことではない。

来年、APECは深センで開催される。中国の改革開放の窓口ともなっているこの街は、中国が一段と高いレベルの開放を推進する生きたシンボルである。中国は既に、深セン会議を機にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に関する議論を深化させ、デジタル貿易、グリーン革新などの分野での協力を推進し、開放の成果をより広く共有する方針を明確に表明している。

アジア太平洋地域の繁栄は、中日などの主要経済国との協力なくしてはあり得ない。保護主義という課題に直面する中、猜疑心と対立をあおることよりも、慶州APECを出発点として、真の多国間主義を共に実践していくことが求められる。中国は日本を含めた各国と共に、来年の深センAPECがアジア太平洋協力の新たな一里塚となることを期待している。(CMG日本語論説員)

11-02 16:31

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