【観察眼】『りすぼん丸沈没』日本の沈黙が破られる日は近い

CRI

2024年9月6日、ドキュメンタリー映画『りすぼん丸沈没』が中国で上映された。監督を務めた方励氏は、2014年にりすぼん丸にまつわるストーリーを知り、それから10年かけて映画にまとめた。その過程では自宅まで売却して資金5000万元(約10億5200万円)を集めたという。

映画公開後、口コミが急速に広がり、ソーシャルメディアも大手メディアもこの作品を取り上げており、中国社会におけるホットな話題の一つとなっている。

『りすぼん丸沈没』が伝えるのは、第二次世界大戦中の1941年に日本軍が香港に侵攻した後の様子だ。1942年10月、1816人の英軍捕虜が日本軍に徴用された貨物船・りすぼん丸に押し込まれ、日本に運ばれた。途中、日本軍がジュネーブ条約に違反し、捕虜を運ぶ旗などを掲げなかったため、浙江省舟山付近を巡航中の米潜水艦が魚雷を発射し、りすぼん丸に命中した。捕虜たちは沈み行くりすぼん丸から次々に飛び降り脱出し、近くの東極島の漁民が命懸けの救助を行ったが、救出されたのは384人で、828人が海に沈んでいった。

方励監督の制作チームは長年にわたって、中国、英国、カナダ、日本を転々として取材や資料収集を行った。この事件の生存者や、関係者の子孫、歴史学者などへの取材も行われた。オーラル・ヒストリー、写真、手紙などの素材を通じて、『りすぼん丸沈没』はこの事件の真相を解明した。りすぼん丸の沈没と捕虜救助を長年研究し、この映画の顧問を務めた英国の退役将校ブライアン・フェインキー氏によると、本作では、戦時下の人間性の暗い一面だけでなく、国家と個人間の恨みを超えた人間性の輝きも伝えているという。日本軍の行為は、国際法と人道主義の原則に背き、捕虜の生命に対する極端な無関心と残忍さを示した。一方で浙江省の漁民は身の危険を顧みず、捕虜の救助を行ったことで、生命への尊重、無私の愛と勇気を示した。

『りすぼん丸沈没』の興業収入は10月3日時点で3700万元(約7億7600万円)を超えた。映画館で上映されるドキュメンタリー映画としては奇跡的な数字だ。同作は2023年8月にイギリスのロンドン、バーンマス、エディンバラなどで上映され、反響を呼んだ。では、日本のメディアは『りすぼん丸沈没』の上映を報道するのだろうか。筆者は日本最大のニュースポータルサイトであるYahoo!ニュースで検索したが、このドキュメンタリーについて報道する日本メディアは一つもなかった。日本向けのウェブサイトとしては在日中国人の会社が運営する『中国経済新聞』だけが『りすぼん丸沈没』上映のニュースを報じていた。中国社会で盛り上がるこの話題に対して、日本のメディアは足並みをそろえて沈黙を保っている。

日本のメディアが報道しない理由は、本作が緻密な調査と取材を通じて、英軍捕虜に対する日本軍の虐待と殺戮という不名誉な行為を暴露していることに関係があるのだろう。しかし、本作が強調しているのは、憎しみや対立を煽ることではなく、人間性の中で最も重要な愛である。中国復旦大学の孫時進教授は『りすぼん丸沈没』について、「戦争を暴きながらも愛を伝える。憎しみではなく、狭いナショナリズムへのコンプレックスでもなく、温かい愛を呼び覚ましている」と評価した。また、『りすぼん丸沈没:忘れ去られた英国の戦時悲劇』の著者である英国の歴史学者トニー・バンナム氏は、「この歴史を記録する倫理的価値は、現在の衝突と挑戦の中で、戦争による傷と苦難を反省し、平和と協力の価値と意義を再確認することにある」と述べた。

方励監督は、日本で最も影響力のある山形国際ドキュメンタリー映画祭の組織委員会に、本作の日本での上映が可能かどうかをメールで尋ねたが、これまで日本側からは何の返事もなかったという。一方で、最新の情報によると、第97回アカデミー国際長編映画賞の中国大陸代表作品に、方励監督の『りすぼん丸沈没』が選ばれたそうだ。世界の誰もが、このドキュメンタリーを通じて、82年前の英国捕虜のストーリーを知るようになる。それには日本の視聴者も含まれる。『りすぼん丸沈没』について、日本の沈黙が破られる日は近い。(CMG日本語部論説委員)

10-09 18:55

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