中米協力の強化はグローバルな課題の解決を後押しする——北京大・賈慶国教授

KANKANインタビュー

トランプ米大統領は5月13日から、国賓として中国を訪問する。トランプ氏にとっては2期目で初めての訪中であり、米大統領による中国訪問は同氏の2017年の訪中以来、9年ぶりとなる。

今回の中米首脳外交は、グローバルな課題の解決や、日本を含む3カ国の今後の関係にどのような影響を及ぼすのか。北京大学国際関係学院教授で、全国政協外事委員会委員を務める賈慶国氏に話を聞いた。

■首脳会談は中米関係安定の重要な契機に

トランプ大統領の訪中は、イラン情勢が依然として混迷する中で行われる。賈教授は、今回の訪問について、双方が互いを重視していることの表れだと指摘する。

「今回の首脳会談は、両国関係が比較的安定している一方で、さまざまな懸案にも直面しているという背景のもとで行われるものです。会談は、中米関係の安定、実務協力の深化、そしてグローバルな課題への共同対処において、極めて重要な意義を持ちます。世界を代表する2大国として、中米が協力を強化することは、多くの課題の管理と解決を力強く後押しすることになるでしょう」

2026年5月12日、米ワシントン。ホワイトハウスのサウスローンで報道陣の取材に応じた後、「マリーンワン」に搭乗するトランプ米大統領(写真:CFP)

賈教授によると、トランプ氏が特に重視しているのは、不法移民、麻薬問題、そして製造業の空洞化に伴う雇用喪失の3点だ。そのため、中米関係もこの大きな枠組みの中で捉える必要があるという。

「トランプ氏はいま、中米関係をより経済的な視点から捉えているように見えます。貿易不均衡の是正、輸出の拡大、ハイテク技術の流出抑制などを通じて、自らの経済目標を実現しようとしているのです。1期目と比べると、2期目のトランプ政権は台湾問題や人権問題などの敏感な議題に対して、より慎重な姿勢をとっており、対中政策には、より実務的で、課題ごとに対応を分ける特徴が見られます」

2026年5月12日、米ワシントン。中国の習近平国家主席との会談のため北京へ向かうのを前に、記者団と話すトランプ米大統領(写真:CFP)

短期的には不確実性が残るものの、両国首脳の共通認識と関係部門の働きかけにより、二国間関係は比較的安定した状態を維持し、一部の分野では協力が進む可能性があると賈教授はみる。

「中長期的に見れば、中米関係にはなお多くの未知数が残されています。しかし、双方が今回の訪問を契機に、実務協力を通じて相互信頼を少しずつ再構築できれば、将来の中米関係の健全な発展に向けた堅固な基盤が築かれるでしょう」

■日本に求められる「相対的な中立性」

第2期トランプ政権の外交姿勢を表す言葉として、「ドンロー主義」という造語が使われることがある。これは、トランプ氏の名前「ドナルド」と、19世紀の「モンロー主義」を掛け合わせた表現だ。

賈教授は、「ドンロー主義」とかつての「モンロー主義」は、いずれもラテンアメリカ地域を重視する点で共通しているとしつつ、前者は強いイデオロギー色を排し、極めて現実主義的な特徴を持つと分析する。

2026年5月12日、米ワシントン。中国の習近平国家主席との会談のため、北京へ向けてホワイトハウスを出発するトランプ米大統領(写真:CFP)

こうした背景のもと、日本国内では日米同盟の持続性や、米国による対日安全保障支援の度合いが弱まるのではないかとの疑念も高まっている。

「こうした戦略的不安には、一定の現実的根拠もあります。近年、米国と欧州の一部の同盟国、さらにはカナダとの関係にも深刻な亀裂が生じているからです。この不安は、日本の現実の政策にも表れています。一方で日本は軍備増強を進め、今後数年間で防衛予算を倍増させる計画です。また、さまざまなルートを通じて米国との結束を維持し、軍事同盟としての姿勢を強めることで、米国の戦略的離反を防ごうとしています」

そのうえで賈教授は、日本が米国一辺倒の姿勢を取れば、かえって自らの外交的余地を狭めることになると指摘する。

「日本にとって望ましいのは、中米の間で相対的な中立の立場を保つことです。それこそが、日本自身の利益になるのです」

■対米追随と軍備増強がもたらすリスク

賈教授は、日本が外交上、相対的な中立の立場を取ることの重要性を強調する一方、現状について懸念を示す。

「残念ながら、高市首相が率いる日本政府は、自国に対する十分な戦略的自信を持てていません。だからこそ、米国一辺倒になっているのです。高市氏の台湾問題をめぐる過激な発言の本質は、台湾を口実に米国を日本の戦略的軌道に引き込み、高市政権が想定する“中国の脅威”に対処するため、米側の支持を得ようとする試みに他なりません」

2026年3月19日、米ワシントン。ホワイトハウスでトランプ米大統領との会談後、夕食会に出席する高市早苗首相(写真:CFP)

賈教授は、こうした対応は日本の安全保障環境を改善するどころか、かえって地域の緊張を高めるとみている。

「このようなやり方は、トランプ政権の明確な支持を得られなかっただけでなく、中日関係を新たな対立の局面に陥らせました。これは日本にとって極めて不利なことです。一方的に防衛予算を増やし、いわゆる“自衛能力”を高める動きは、安全保障をもたらすどころか、周辺国に強い脅威のシグナルを発し、より強い警戒を招くだけです。こうした悪循環こそが、日本が軍国主義の方向へと滑り落ちるリスクを高めているのです」

■台湾問題の地政学的利用は「極めて危険」

昨年末、高市首相による台湾問題に関する国会答弁をきっかけに、中日関係は冷え込んだ状態が続いている。賈教授は、現状を打開するには「解鈴還須繋鈴人(鈴を結んだ者が鈴を解かなければならない。問題を引き起こした側が解決に動く必要があることのたとえ)」と語る。

「日本側は現実を直視する必要があります。たとえ自らの表現が相手に誤解されたと考えているとしても、なぜ誤解を招いたのかを反省しなければなりません。日本側は、自らの立場を積極的に明らかにすべきです。すなわち、一つの中国の原則を堅持するのか、台湾が中国の領土の不可分の一部であることを認めるのか、という点です」

2025年11月26日党首討論で発言する高市首相(写真:CFP)

賈教授は、台湾問題は中国の核心的利益に関わるものであり、日本が政治的目的のために利用すべきではないと話す。

「台湾問題を利用して地政学的な目的を達成しようとする試みは、それ自体が極めて危険です。日本が真に互恵・ウィンウィンの両国関係を守りたいと願うのであれば、その大前提は台湾問題に適切に対処することです」

■中米関係の安定は中日関係の緩和にもつながる

中国外交部が公開した日程によると、トランプ氏の訪中日程には、世界遺産・天壇への訪問も含まれている。

これについて賈教授はこう語る。

「私はこれを好意的に解釈したいと思います。天壇は明・清の時代に、為政者が五穀豊穣を祈った聖地です。今回の訪問は、中米協力への祈りを象徴しているのかもしれません。二つの大国が協力を通じて、両国民、ひいては世界により良い未来をもたらすことを願っているのではないでしょうか」

2026年5月12日、北京・天壇公園。祈年殿の外周で記念撮影をする観光客。北京市天壇公園管理事務所は12日、13日から14日まで天壇公園の一般公開を一時停止すると発表した(写真:CFP)

分析筋によると、トランプ氏の今回の訪中では、習近平国家主席との対面の機会が計6回設けられる見通しだ。また、2026年には国際会議の場も含め、中米首脳の対面交流が4回行われる可能性がある。

賈教授は、安定した中米関係は中日関係の緩和にも寄与すると強調する。

「米国では過去数年、とりわけバイデン政権期には、日本を取り込んで中国に対抗させようとする動きが続いていました。第2期トランプ政権も、日本に対して軍事費の増額や対中ハイテク輸出規制などで圧力をかけ、日本を難しい立場に追い込んできました。もし中米関係が改善すれば、日本が直面する外部からの圧力は軽減されます。そうなれば、日本はより大きな外交的余地を得て、中国と歩み寄り、共通利益のある分野で協力を進めることができるでしょう」

(聞き手・構成:王小燕、校正:梅田謙)

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