今月18、19日の両日に、「2024北京“市民相談への即時対応”改革フォーラム」と題する国際会議が北京で開かれた。「“市民相談への即時対応”改革」とは、北京市が2019年にスタートした、「12345ホットライン」を通じての市民相談サービス改善の取り組みを指す。
電話番号12345番にかければ、通勤通学の交通手段についての相談から、渋滞の悩み、高齢者向けの食事の配達やバリアフリー化に関する相談、冬の暖房についてや、北京の街並みに関する意見など、ありとあらゆる困り事や相談について、行政が速やかに解決を約束してくれる。
このサービスの恩恵を受けられるのは中国人だけではない。北京市では中国語だけでなく、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、アラビア語、日本語、韓国語の8つの外国語にも対応している。もちろん、北京在住の外国人に限らず、観光や出張などで北京を訪れている人々の困りごとの相談も受け付けている。さらに、最近は外国企業の相談に乗ってビジネスマッチングをサポートするサービスも始まっている。
この改革が始まった6年の間に受理した市民や企業からの相談は計1.5億件に上り、その応答率は100%で、解決率と満足率はいずれも97%に達している。最新のデータでは、市民からは1日当たり6~7万件、企業からは1日当たり1000件余りの相談を受けているということだ。
こうした大量の相談をハードウェアの面で支えているのは、北京市豊台区にある12345市民ホットライン通話サービスホールだ。700席を超えるオフィスに1700人余りのスタッフが交代で勤め、年中無休の24時間体制で速やかに相談に対応している。
1.6万平方キロメートル、常住人口2185.8万人を誇るメガシティ・北京が、人中心のまちづくりに向けて実現した成果の一つと言える。
「12345」プラットフォームにアップされている全てのデータは、北京市の各レベルの行政の間で共有されている。北京市はホットラインの寄せられた情報に基づいてデータベースを構築し、「日間報告、週間分析、月間通報、年間チェック」のメカニズムを整備している。2021年からは、前年度の12345ホットラインのビッグデータ分析に基づいて、問題解決の方法を事後対応から予防へと変えつつある。
19日まで開かれていた「2024北京“市民相談への即時対応”改革フォーラム」のテーマは「人中心の都市ガバナンスの現代化」。700人が出席し、うち170人が外国からの参加者であった。日本から出席した千葉大学の秋田典子教授は、「北京市の皆さんが熱い思いを持ち、12345ホットラインを通じて、国連でいう“誰一人取り残さない”ことを実践しようとしている。北京ではさまざまな先進的な取り組みがされていることを今回知り、非常に勉強になった。国や方法は違っても、進もうと思っている方向は同じだということに共感した」と感想を述べた。
秋田教授はまた、フォーラムで特に印象的だったこととして、市民の声を聞いて通勤用の新しいシャトルバス路線を新設した北京市の事例を挙げ、「日本もメガシティでは遠距離通勤者が多く、通勤問題は日本の大都市圏にとっても深刻な問題。北京の取り組みの中には、日本が共有できる部分もあるはず。12345ホットラインを通じて課題を見つけ、具体的な解決策を採用していることは素晴らしい」と評価した。さらに、北京市が取り組む多様な広域連携や、地域の単位の再構築という部分について、互いに学んでいくことに期待を寄せた。
実は、中国には12345ホットラインの前身といえる制度があった。それは、1980年代に都市部で開設された「市長公開電話」というホットラインだ。北京市の場合、1987年の開設当初は電話機1台、交換手3人からのスタートだった。その後、電話相談窓口は用途別に細分化していったのだが、2019年に北京市は64本にまで増えた窓口を「12345」という一つの番号に統合するという大胆な試みを実行に移した。一元化した窓口であらゆる人からのあらゆる相談に速やかに対処し、解決を図る改革が始まった。デジタル技術のエンパワーメントもあり、今の12345ホットラインは今や、単なるコールセンターから、行政サービスのナビゲーター、揉め事の調整者、世論と民意が集まる情報拠点として生まれ変わり始めている。北京以外でも、12345ホットラインは多くの都市で開設されている。
国連の予測によると、2050年までに世界人口の70%が都市に住むようになるという。都市部に人が集中する時代に、都市ガバナンスの重要性はますます高まるだろう。そんな中、北京市が進める「市民相談への即時対応」改革と「12345ホットライン」が得た経験は、世界の現代化都市ガバナンスにも大きく貢献していくことだろう。(CMG日本語論説員)
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