


CGTN日本語部は3月下旬、中日両国の学識者をパネラーに迎えて、「中国と中日関係のいまを知るための対話」を開催しました。今回の対話では、中国の長編アニメーション映画『ナタ2』の大ヒットから見る中国映画産業の現状、デジタルイノベーションの進展、中日経済関係の今後について議論を深めました。
この対話は、CGTN日本語キャスターの王小燕が進行を務め、中国と日本からあわせて4名の学識者がパネラーとして参加しました。
■動画第1部 『ナタ2』の大ヒットから見えたもの
■動画第2部 中国でイノベーションが生み出される下地
■動画第3部 より良い中日関係の構築に向けて
【司会進行】 王 小燕キャスター
【パネラー】
・日本企業(中国)研究院実行院長・陳 言さん
・中国芸術研究院教授・支 菲娜さん
・桜美林大学大学院国際学術研究科 特任教授 山田周平さん
・日本国際貿易促進協会 理事兼事務局長 泉川友樹さん

(内容抜粋)第1部 『ナタ2』の大ヒットから見えたもの
興行収入157億元で世界歴代興行収入5位にランクインした『ナタ 魔童の大暴れ』
今年1月下旬、中国で封切られた長編アニメーション映画『ナタ2』(日本公開時のタイトルは、『ナタ 魔童の大暴れ』)が空前の大ヒットとなり、国内外で興行収入157億元(約3095億円)を超え、世界歴代興行収入では5位にランクイン(2025年4月22日現在)しました。第1部では、この現象から読み取れる中国映画産業の現状と課題について議論しました。
<記録的なヒット作の誕生は世界の映画産業の朗報>
――『ナタ2』のような超ヒット作が誕生したことの意義をどう受け止めていますか。
支『ナタ2』の成功は、映画人に大きな自信を与えただけでなく、世界の映画産業全体にとっても希望となりました。短編動画が主流となる中で、延べ3億人以上が劇場に足を運んだことは、優れたコンテンツには依然として強い吸引力があることを証明しました。
<中国のアニメ制作 日本との交流と学び合いの中で成長>

中国芸術研究院教授・支 菲娜さん
――『ナタ2』を手がけた餃子監督は1980年生まれ。日本のアニメ『ドラゴンボール』や『聖闘士星矢』を見て育ったそうです。日本とのアニメ交流という流れの中で、『ナタ2』の誕生をどう見ていますか。
支日本は、中国のアニメーション産業の成長に大きく関わっています。この映画の制作に参加したスタジオには、蘇州を拠点とする重要な会社も入っているのですが、1990年代に、アウトソーシングで、日本のアニメ映画の制作の一端を担うスタジオが蘇州にたくさんできました。中国のアニメ産業はそういうアウトソーシングの中で、アニメ映画の制作に必要な美的センス、基礎スキルなどを身につけたのです。
近年は、中国も物価や人件費が高くなり、もう日本の下請け、孫請け先としては向かなくなっています。今は、自前で開発した先進技術があり、自力でアニメ映画を作れるようになりました。これは言ってみれば、産業の高度化のプロセスでもあります。
一方、日本のアニメ関係者も中国市場を重視しています。新海誠監督や宮崎駿監督の作品が中国で非常に人気があり、『君の名は。』や『すずめの戸締まり』、『SLAM DUNK』、『君たちはどう生きるか』などは、中国でも良い興行収入を獲得しました。
映画は、国境を跨いで、心と心を繋ぐ良い手段なので、私としては、より多くの優れた作品が両国で上映され、市場での成功を収めることを願っています。
<海外向け発信が依然として中国アニメの課題>
―― 『ナタ2』は、外国の方には分かりにくいのではという懸念もあるようですが……
支確かに中国の神話を題材にした映画やドラマは、その世界観について、外国人の観客にとって、分かりにくい傾向があります。
日本のアニメ映画の『鬼滅の刃』は、映画化の前から漫画やゲームを通じて、広く知られていました。下地もない状態で、いきなり複雑な物語を映画で語りだすと、外国の方には分かりにくいのではと思います。
中国映画は世界に進出する考えがあり、それに向けての努力も随分しましたが、今後は、ハリウッドのように世界市場を意識したストーリーテリングが求められると思います。
(内容抜粋)第2部 中国でイノベーションが生み出される下地

2025年4月19日 北京で開かれたヒューマノイドロボットも参加したハーフマラソン大会の様子
最新AIのディープシークやマヌス、踊る人型ロボットなど、2025年の年初から民間企業による開発の成果が立て続けに発表されています。第2部では、デジタル経済を推進してきた中国のイノベーションにフォーカスします。
<一気に開花した中国のイノベーション 下地に人材育成>
――中国の民間企業によるイノベーションについて、皆さんの注目点をお聞かせください。

日本企業(中国)研究院実行院長 陳 言さん
陳池にある蓮の花は、最初の一輪、二輪から始まって池の半分まで開花するまでに、29日もかかりますが、30日目になって一気に全部咲きます。現在の中国で、イノベーションの成果が一気に発表されているのは、おそらくこの、「蓮の花の法則」で説明できると思います。
中国は高校教育を受けた人口が多く、しかも、理工科系専攻の学生が6~7割も占めている、それが20年、30年も続くと、非常に分厚い研究開発の人材が育つということです。こういった人材の備蓄が中国のイノベーションを支えていると指摘したいです。
さらに、もうひとつ。それは、中国ではこの20年間、ITプラットフォームの土台ができたうえに、フルセット型のものづくりが相まって、相乗効果を発揮していると思います。それが今日になり、文化もその土台に載せたため、人気作の『ナタ2』が誕生したと私は見ています。

2024年8月24日、北京蓮花池公園に咲く蓮の花
山田私はいま、桜美林大学の中国語MBAコースで教えています。小米(シャオミ)など中国の企業から現役の社員も入学しています。中国はここ10年ぐらい、スタートアップのブームです。私はいろんなスタートアップの会社を取材してきましたけど、シャオミの創業者の雷軍さんは、それまでにもいろんな企業を次から次へと創業してきました。小米が他社と比べてもっとも優れているなと思ったのは、やはり経営者のこうした経験値だと思います。
泉川陳言さんが人材のことについておっしゃいましたが、実は、それは数の問題だけじゃなく、質の問題もすごく重要だと思います。国や地方の戦略に豊富な人材、しかも、その人材がものすごく努力している。そういったことが中国の発展につながったのだと僕は見ています。
<新技術開発+新しいニーズを生み出す政策も必要>
――ところで、中国では今年の政府活動報告には「エンボディドAI」、つまり、身体性をもつAIという言葉が初めて登場しました。こういったイノベーションの成果を中国経済の成長をけん引するものとするには、何が大事だと思われますか。
陳今、世界の産業用ロボットの5〜6割ぐらいは中国にあります。これはもう日本の数倍、数十倍の数じゃないでしょうか。こういう工業生産の第一線でたくさんのロボットが投入されているうえ、エンボディドAIを備えたロボットも作っている。これが中国の一つの大きな特徴かなと私は見ています。

リモートで出演した日本国際貿易促進協会 理事兼事務局長 泉川友樹さん
山田工場の生産性の向上にロボットが使われるというのは、非常にいいことだと思います。人の形じゃなくても、人間の行動をアシストするロボットというのはたくさんあるし、そういう分野にもいつの日か、光が当たる時がやってくると思います。
泉川瀋陽(遼寧省)にあるアームロボット工場を見学したとき、ロボットがロボットを作っている現場を見て、無人化が産業でどんどん実装されていることがよく分かりました。
産業政策として、どんどん新しい技術を入れていくというのは重要なことだと思っています。懸念しているのは、新しい技術が生み出されたから、それがすぐに経済発展につながるかっていうと、また別の話。中国は、供給能力が結構あるので、新しい技術でさらに大きな供給能力を手に入れることになれば、そこで働いていた人たちの雇用の問題とか、社会政策的なものも総合的に考えていかないといけないと思っています。
新技術の登場により、消費が喚起され、新しいニーズを生み出す政策も同時にやっていく、そういったことを総合的に考えていく必要があります。
(内容抜粋)第3部 より良い中日関係の構築に向けて

2025年3月22日、東京で開かれた第6回中日ハイレベル経済対話の様子
このセッションでは今後、中国と日本の関係構築に必要な視点、メディアに求められることなどをめぐり、議論しました。
<中日の協力・ウィンウィン関係 中身に変化>
――まずは、中日の協力とウィンウィンの関係の見通しをめぐり、皆さんが注目されていることを教えてください。
陳僕は電池企業を取材した時に聞いたことですが、日本の場合は大体1〜2週間に一つのサンプルを出して、何度も実験するのですが、中国企業の場合は、AIを使って数千のサンプルから絞って、非常に成功の可能性の高いものを取り出して実験しているんですね。さらに、製薬企業もどんどん新しい商品を出している。この速さは、将来的に日本企業と協力し、場合によっては競争する時には、どういう関係を作ってくるのか、ここが注目されるべき点だと私は強く思っています。
泉川中日のウィンウィン関係の中身に、少し変化は起きてくると思います。
日本がどちらかというと表にいて、中国は裏方で、その関係を支えていましたが、中国の方が前面に出てくるという時代になってくるかなと思います。表に出てきているものをうまく捕まえて、新しい関係を作っていけるかというのが重要だと思っております。
山田私は日本の大学の中国語MBAコースで教えています。学生は平均年齢40歳、中国で創業経験のあるような方がほとんどです。今まで見なかったような発見を経営者の人たちに与え、互いに理解を深めて、新しいビジネスチャンスを探すという意味では、何らかの貢献ができているのかなとは思います。それがいつかウィンウィンにつながるよう願っています。

リモートで出演した桜美林大学大学院国際学術研究科 特任教授 山田周平さん
<情報発信の視点をマクロからミクロへ>
――中日両国の関係構築には、相互信頼が大事だと指摘される一方で、一般の人々は通常、報道を通して相手国を知るわけですが、両国の相手国関連の経済報道の姿勢について、皆さんが気になっていることがあればお聞かせください。
陳私が日本関連の記事を書く時、「日本の経営方針、ものづくり、匠の精神に学ぶ」ことを基本的な姿勢にしており、そうすることで、少しでも中国の読者に日本への理解を深めてもらいたいのです。一方、一部の日本のジャーナリストは面白おかしく、実態と離れた中国を取り上げている、とたまに感じます。
山田これからはマクロなことをばかりではなく、本当に互いに理解を深めてビジネスをやるためには、もうちょっとミクロの視点で情報を出さなきゃいけないと思うんです。ただし、これには時間がかかるし、その担い手となる人材を育てる努力も必要だと思います。
泉川日本で中国の報道を受けていると、どうしても中国を大きな枠で捉えてしまうのです。食品の安全性の問題とかが起きても、「中国の食品が危ない」みたいな、ざっくりした感じで捉えられてしまいます。
日本国内の場合は、個別の企業だとか、その会社の問題というふうになるんだけど、中国でそういうことが起こると、「中国全体が危ない」みたいな話になってしまう、というイメージを日本の読者や視聴者が持ってしまう。もうちょっとミクロというか、解像度の高い報道によって、個別の問題であるということがわかるような報道をしてもらいたいなというのは、個人の見解です。

<“中国が「失われた30年」に突入”は早計>
――オンラインで参加されている視聴者からの質問です。「日本のメディアでは、中国がデフレに陥って、日本でいう『失われた30年』が始まったという報道を目にしますが、実際はどうなっているのか」。これについて皆さんの意見は?
陳「失われた30年」という言葉は、日本メディアが、日本経済のこれまで30年を語るときに使っている用語ですが、何が失われたかというと、私から見れば、おそらくイノベーションの意欲を失ったため、経済も発展しない、社会はどちらかといえば停滞してしまったように思います。
比べてみれば、中国は、今年の「政府活動報告」の中でも言及されているように、イノベーションする力を精一杯引き出し、それを後押ししようとしていることがとてもよく伝わります。また、日本の過去30年では、経済成長は1パーセント程度でしたが、中国は今下がったと言っても5パーセントです。以上のことから、中国は長く停滞していくというような予測は、私は当てはまらないように思います。

泉川中国の経済状況は、バブルがはじけた当時の日本とは全然違うものもありますし、不動産に頼った発展ではもう持続が不可能だというのは、中国政府も、研究者の方々も昔から言っている話でした。今、中国は新しい経済の成長エンジンを作り出そうとするために取り組んでいる最中だと思っています。「失われた30年」と決めつけるのは早計かなと私も思っています。
――締めくくりに、視聴者の皆さんへのメッセージを一言ずつお願いします。
山田本日のような交流行事をぜひ続けて開催されてほしいと思います。
泉川AIがどんなに発達しても、「私の脳みそはここにある」ということを忘れないでほしい。日本と中国の若者たちは、自分の頭で相手国を見つめ、日中の経済協力をどうするべきか、ということを考えていくようなきっかけに、今回の番組がなってくれるとありがたいなと思います。
陳ぜひ相手国に友人を一人ぐらい作ってほしい。個人対個人の交流がすごく大事かなと思います。
支映画が心の架け橋。みんな、たくさん日本の映画中国の映画を見て、相手国の考え方を知るようにしましょう。
(構成:王小燕、校正:MI)
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