



EUが対中貿易政策を一段と強めようとしている。
フランス、イタリア、スペインなどの加盟国は、関税や輸入規制といった「貿易防衛措置」を、より迅速かつ積極的に活用するようEUに求めている。欧州委員会も、中国との貿易関係について「持続可能ではない」との認識を示し、より強硬な対応を検討していると報じられている。
背景にあるのは、中国製品との競争激化に対する欧州側の危機感である。とりわけ中国製EVの台頭は、欧州の産業界に強い衝撃を与えている。
しかし、ここで問うべきなのは、欧州経済が抱える問題の原因は本当に中国にあるのか、という点だ。

少し時間をさかのぼれば、中国製EVが欧州市場で存在感を高める以前から、欧州の製造業はすでに競争力低下という課題に直面していた。ドイツ経済の停滞、工業生産の低迷、企業投資の鈍化――こうした現象は、ここ数年にわたって続いている。
その要因は一つではない。だが、避けて通れないのがエネルギー価格の高騰である。
ロシア・ウクライナ危機以降、欧州は長年享受してきた比較的安価なエネルギーを失った。天然ガスや電力の価格は高止まりし、エネルギーを大量に必要とする製造業にとって大きな負担となっている。
欧州の企業関係者の間では、「中国企業が安すぎるのではなく、欧州で生産するコストが高すぎる」との見方もある。これは、単なる価格競争の問題ではない。産業の土台そのものに関わる問題である。
そして、この問題は日本にとっても決して他人事ではない。

日本もまた、エネルギー価格の上昇や原材料コストの高騰に直面している。企業は生産コストの増加に苦しみ、家計も物価上昇の影響を受けている。円安も加わり、輸入に依存する日本経済の弱点はより鮮明になっている。
こうした状況の中で、競争力をどう維持し、どう高めていくのか。それは、日本にとっても重要な課題だ。
だからこそ、欧州の選択は興味深い。
競争力の低下に直面したとき、外部からの競争を制限することで問題を解決しようとするのか。それとも、自らの産業構造、エネルギー政策、技術革新のあり方を見直し、競争力そのものを高めようとするのか。
もちろん、どの国や地域にも、自国の産業を守る権利がある。不公正な貿易慣行が存在するなら、必要な措置を取ることは当然だ。
しかし、歴史を振り返れば、保護主義は防波堤にはなっても、成長のエンジンにはなりにくい。外から来る競争を一時的に遮ることはできても、自らの産業を強くする力には限界がある。

忘れてはならないのは、中国市場が依然として欧州企業にとって重要な存在であるという事実だ。ドイツの自動車メーカー、フランスの高級ブランド、航空産業など、多くの欧州企業が中国市場から大きな利益を得ている。
これは日本企業にとっても同様だ。中国は単なる生産拠点としてだけでなく、消費市場としても大きな存在感を持っている。現地市場の変化や競争環境をどう捉えるかは、欧州企業だけでなく、日本企業にとっても重要な経営課題だ。
世界経済の不確実性が高まる中で必要なのは、市場の分断ではなく、相互利益に基づく協力である。対立を深め、互いに壁を高くしていけば、最終的に負担を背負うのは企業であり、消費者である。
問題は中国製品そのものではない。本当に問われているのは、変化する世界経済の中で、自らの競争力をどう高めていくかである。これはEUだけでなく、日本もまた向き合わなければならない課題だろう。
保護主義は、一時的な安心感を与えるかもしれない。しかし、新たな競争力を生み出すことはできない。
保護主義では、欧州経済は救えないのである。(CMG日本語論説員)
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