西園寺一晃氏:高市首相は「発言を撤回すべき」  国際協調、国際協力と平和の追及こそが唯一正しい道

CGTN

日本の高市早苗首相が11月7日の国会答弁で、台湾問題をめぐって中国の内政に干渉する誤った発言を行い、中日関係を危機に追い込んだ。この発言の問題はどこにあるのか、また、中日関係の危機をどう打開すべきかについて、フリーランスジャーナリストで、東日本国際大学の西園寺一晃客員教授に聞きました。

西園寺一晃さん(2019年、CMG日本語部・劉叡撮影)

■高市発言こそ「日本の存立に関わる」危険なもの

――高市首相による国会答弁での「存立危機事態」発言について、どこが問題だと思いますか。

台湾海峡で有事が起きると、それは「日本の存立」を脅かすことになるという論理は、あまりにも飛躍しています。それより重大なのは、起きてもいない事態について、「起きたら日本は参戦する」と明言することで、これは中国を「仮想敵国」と扱い、事実上、中国に対する「事前宣戦布告」に等しい言動です。

日中国交正常化以降、歴代政権は「台湾有事」には一切触れてきませんでした。自衛隊派遣、つまり事実上の参戦表明を行ったのは、高市首相が初めてです。簡単に言えば、経過はどうであれ、日本は台湾海峡の武力紛争に参戦するということです。この高市発言こそ、「日本の存立に関わる」危険なものだと私は思います。

■「台湾有事は日本有事」は侵略者の論理

――日本政府はこれまで、「台湾問題における立場は変わっていない」と表明してきました。しかし、一方で、「台湾有事は日本有事」とする一部の政治家の主張もあります。

台湾海峡で軍事衝突が起き、米軍が出動すれば、沖縄にある米軍基地も攻撃対象となり得ます。従って、日本にとって「台湾有事」はあってはならない事態であり、政府や政治家は決して「台湾有事」を煽ってはいけないのです。

しかし、高市発言は、すなわち「台湾有事は日本有事」であり、台湾を「日本の生命線」と言っていることと同じです。かつて軍国主義時代、日本の軍部は「満蒙は日本の生命線だ」と言い、武力で「満蒙」(中国の東北3省と内蒙古の一部)を占領し、傀儡国家「満州国」を建てました。その愚行を再び繰り返すのかということです。

「台湾」は日本の国土ではありません。他国の領土で起きる武力紛争に、日本が自衛隊を派遣して参戦することは明らかな憲法違反であり、国際法・国連憲章違反です。これは侵略者の論理だと思います。

衆議院予算委員会で答弁する高市首相(2025年11月7日)(写真:視覚中国)

■アジアの平和と世界の安定にとって大きなマイナス

――高市発言が地域や世界の平和維持にもたらす影響をどうみていますか。

大きなマイナスとなると私はみています。特に日本が、ドイツと異なり、過去の清算や反省が十分ではないまま軍事力を大幅に拡大し、他国の領土に出かけて戦争すると公言するなら、多くの国、特にアジア諸国は警戒心や恐怖心を抱き、かつての「日本軍国主義」の悪夢を蘇らせるでしょう。

今の中国はかつての中国ではなく、今のアジアはかつてのアジアではありません。日本が再び過去の過ちを犯すなら、それは日本自身を滅亡の道に導くことになります。その意味で、今回の高市発言はアジアの平和を乱すものであり、罪は大きいと考えます。

■台湾問題は中国の内政 四つの政治文書の堅持を

――日本の敗戦から80年が過ぎた現在、日本の政治家は「台湾問題」がどれだけデリケートで重要かについて、認識する能力を失っているという指摘もあります。

まず明確にしなければならないのは、「台湾問題」は中国の内戦の延長線上にある問題で、本質的には中国の統一実現という国内問題だということです。

多くの国はさまざまな複雑な問題を抱えています。例えば、米国には根強い「人種差別」問題、英国には「スコットランド分離独立」問題、日本には複雑な「沖縄」問題があります。これらの問題は当該国が自ら解決すべきもので、他国の干渉は許されません。

国交正常化以来、両国の指導者は日中間に横たわる複雑な諸問題に対して、基本的に四つの基本文書の精神を守り、知恵を絞り、冷静に対応してきました。ところがここ数年、日本国内で日中関係を根本から破壊するような動きが見られます。一つは極右勢力や歴史修正主義勢力の台頭であり、もう一つは、政界において「台湾」に対する四つの基本文書の精神を破壊する言動が増えていることです。

普天間基地付近を行進するデモ隊(沖縄県宜野湾市・2025年5月17日)(写真:視覚中国)

■日本人は中国脅威の「虚像」に警戒せよ

――言い換えれば、日本国内では、右寄りの考えを背景に台湾問題や中国の脅威が議論されているということでしょうか。

ここ数年、日本国内で台頭しつつある極右勢力や歴史修正主義勢力の特徴は、「日本第一」あるいは「日本人第一」を掲げていることです。彼らは外国人や移民が「日本文化を破壊する」「日本人の職場を奪う」「日本社会の治安を悪化させる」と主張し、「排外主義」を煽っています。特に、中国に対しては挑戦的で、「軍備増強で中国に対抗する」と言っています。その根拠として、「中国の軍備増強は異常なスピードで進んでいる」などといった全くありもしない主張を行い、人々の恐怖心を煽り、中国への警戒心と憎しみを募らせるネガティブキャンペーンを行っています。

この「中国の異常な軍事力増強」という「虚像」に、多くの日本人は怯えており、世論調査でも日本人の対中国観が悪化している大きな要因の一つになっています。

――「虚像」に対して、西園寺さんが指摘する「実態」とは何でしょうか。

2024年の軍事費(防衛費)がGDPに占める割合は、米国3.26%、日本1.30%、中国は1.26%です。さらに2024年の軍事費(防衛費)の対前年比増加率は、中国が+7.2%、日本は+21.0%です。

一般的に各国の軍事費(防衛費)は、GDPの増加に比例して増加していますが、日本はGDPがほとんど成長していないのにもかかわらず、軍事費(防衛費)は大幅に増加させています。実は、「異常な増加」は日本であり、評論家や政治家の中には、日本は2027年の軍事費(防衛費)を対GDP2.0%に引き上げ、最終的には5.0%を目指すべきだと主張する者もいます。

高市首相の発言撤回を求めて首相官邸付近に集まった抗議者(2025年11月21日夜)(写真:視覚中国)

■国際協調、国際協力と平和の追及こそが唯一正しい道

――高市首相の間違った発言が原因で、中日関係に大きなダメージが生じています。西園寺さんは、現状の打開に向けて、何が必要だと考えますか。

まず、高市首相には日本の国益のために次の具体的な行動を迅速に実行してほしいと考えます。

①   国会での発言を撤回し、謝罪すること。②   日中関係は対米関係と共に、日本にとって最も重要な二国間関係であると表明すること。③   日中首脳間交流を含む、官民間の多方面での交流を提案すること。④    今後、特に青少年交流に対し、政府としての支援を表明すること。

現在、日本に求められているのは、日本国憲法を守ることを前提に、日中国交正常化の共同声明など4つの基本文書で規定された各項目を遵守し、その精神を具体的に実行することです。

そのうえで、正しい歴史認識を基礎に日中関係の安定と「戦略的互恵」関係を築く努力を行うことです。そして、「台湾問題」は中国の国内問題として、日本は一切関与せず、「2つの中国」「1中1台」にも加担しないことを明確に表明することが重要です。

私は、国際協調、国際協力、平和の追及こそが、日本とアジアの安定と繁栄を実現し、真の日中友好を実現する唯一の正しい道だと思っています。

(取材・記事:王小燕、校正:MI)

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