【観察眼】「飢えのない暮らし」から「金の天秤棒を担ぐ未来」へ

CGTN

習近平国家主席は、2020年の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協会議)の期間中、経済分野の政協委員との会議の席で、北部の陝西省の農村で過ごした若き日の経験を語った。

1969年、まだ16歳にも満たなかった習主席は、陝西省の梁家河という農村の生産隊に入隊した。そして、村人たちを率いて井戸を掘り、棚田を整備し、堤防を築き、メタン発酵槽を設置するなど、7年間にわたる農村生活を経験した。

ある日、習主席は村人たちに、「どんな暮らしが理想なのか、具体的に教えてほしい」と尋ねた。すると「物乞いをせずに済み、粗末な物でもいいのでお腹を満たせること」「コーリャンやトウモロコシなどの穀物が食べられること」「白いごはんを自由に食べ、肉も頻繁に食べられるようになること」という答えが返ってきた。

それを聞いた習主席は「もっと大きな理想は?」と問いかけた。するとある村人がこう答えた。「いつの日か、山の仕事で金の天秤棒を担げるようになりたい」。

そして、習主席は「“金の天秤棒”は“農業の現代化”を象徴するものだと理解した」と述べた。

村人が追い求める「飢えのない生活」「お腹を満たせる生活」「白いごはんや肉が食べたい」という理想の暮らし、そして「金の天秤棒を担いで山に行く」という象徴的な意味を持つ夢。そのすべては彼らの現代化生活への熱い期待を表している。それは農民たちの単なる夢ではなく、農村振興、農業の転換と高度化といった中国政府の目指す方向とも一致する。

農業、農村、農民の「三農」問題は、中国の経済・社会発展における最重要課題のひとつだ。人口が多く、農業の歴史が長い中国にとって、農業の安定は国家の安全と社会の調和を支える基盤である。先週発表された、今年の「中央1号文書(中国共産党中央委員会、国務院が毎年発表する最初の文書)」では、2004年から22年連続で「三農」問題に焦点が当てられており、農業と農村の発展を重視する政府の姿勢が示されていた。

今年の「文書」では、改革開放と科学技術革新を原動力とする農村の基本経営制度の健全化、国の食糧安全の確保、大規模な貧困の発生および再発防止、農業の産業化の推進や管理レベルの向上など、具体的な目標と施策が示された。これらは、中国政府の農業・農村発展に対する包括的な計画であり、グローバル化の波に対応しながら持続可能な発展を実現するという考えと決意を示すものだといえる。

特筆すべきは、今年の「文書」で初めて「農業の新たな質の生産力」という概念が打ち出され、農業の新たな質の生産力の強化と農業発展の新たな原動力の育成が強調されたことだ。近年の科学技術の発展に伴い、世界の農業は大きな変革を迎えている。ビッグデータ、人工知能(AI)、クラウドコンピューティングなどの技術革新は、農業のスマート化、精密化、高効率化を推進している。

例えば、バイオ育種技術による高収量、高品質、病虫害に強い新品種の開発は、食糧安全と持続可能な農業の発展を支援する。ドローン技術が精密な施肥や農薬散布を可能とすることで、生産効率の向上と、環境汚染の軽減が可能となる。AI技術を活用した作物の成長状況のリアルタイムモニタリングは、生産環境の最適化や農業生産のスマート化レベルの向上を可能とする。デジタル技術による農業のビッグデータプラットフォームの構築は、農産物のトレーサビリティを実現し、品質の向上と市場競争力の強化を可能とする。

農業の新たな質の生産力の提唱は、世界の農業の将来にも新しいアイディアを提供し、中国と日本の農業技術協力にも、新たなチャンスをもたらした。伝統的な技術大国である日本は、バイオ技術を活かした育種やスマート農業機器や設備などの分野で先進的な技術と経験を持つ。一方、中国は巨大な市場と農村発展の潜在力を有している。中日両国の農業技術分野の協力には相互補完性があり、互恵ウィンウィンを実現することができるだろう。

かつての「肉を食べたい」という素朴な願いは、すでに中国のほとんどの地域で実現された。「金の天秤棒を担ぐ」という夢も、農業現代化の歩みとともに実現に近づいている。中国は国内の発展を進めるだけでなく、世界の大国としての責任を果たし、農業現代化を通じて農村の繁栄と農民の所得増加を推進し、世界の貧困削減と持続可能な農業の発展に貢献していくだろう。(CMG日本語部論説員)

02-26 18:41

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