


中国の現状と未来、そして日中関係を冷静に分析し続ける富坂聰氏。中日を往来する中で感じる日本社会の中国認識の歪みは、コロナ禍以降、さらに深刻さを増しているといいます。
新著『おそるべき中国一強の時代へ』の刊行を機に、なぜ日本は中国を正しく見ることができなくなったのか、その根源と、メディアが果たすべき役割について、引き続き話を聞きました。

■「中国叩き」が売れるメディアの宿痾(しゅくあ)
――著書の中で取り上げられた日本メディアの報道で、印象に残った事例があります。中国の公文書にある台湾統一に関する「武力行使を放棄する約束はしない」という表現を、短絡的に「対台湾 『武力行使辞さず』」と伝えていたことです。発言の趣旨が、かなり歪んだ形で伝わってしまうように感じます。その背景をどう見ていますか。
これは商業ジャーナリズムの宿痾(しゅくあ)だと思っています。正直に言えば、メディアは今、存立の危機にあります。多くのメディアが赤字で、非常に苦労しています。そうした中で、分かりやすく売れるものの一つが、「中国叩き」です。中国を攻撃すると人気が出る。逆のことをやると売れない。
もう一つは、コロナ禍で対中感情が悪化したことです。これに伴い、メディアの報じ方も明らかに一線を越えるようになりました。これまである程度保っていた「理性」を踏み越えて、非常に攻撃的になったと思います。
――著書では、「一帯一路」をめぐる日本メディアの報道も深く切り込んでいます。
「義烏ー新疆ー欧州」義烏プラットフォーム「一帯一路」イニシアチブ10周年記念号列車が義烏西駅を出発(2023年11月21日、義烏、写真:CFP)
「一帯一路」について、日本では「途上国を『債務の罠』にはめ、借金漬けにしている」といった報道がなされています。しかし、現実はそう単純ではありません。
私が記者に「債務の罠」の具体例は何ですかと聞くと、出てくるのはハンバントタ港だけです。プロジェクトはたくさんあるのに、一つの事例だけで全体の性格を決めているのは間違いではないか、と思いますし、ハンバントタ港の事例が本当に債務の罠か、きちんと説明できるのか否かも疑問です。
さらに、ハンバントタ港をめぐる報道には、書き方がおかしい部分があります。99年間で借金が返済できない場合、「中国側に引き渡される」と書かれることがありますが、正確に言えば、引き渡されるのは中国とスリランカの合弁企業です。その点を正確に書かないまま、あたかもハンバントタ港が軍事利用されるのではないかという懸念と結び付けようとしている。しかし、商業的な権利の獲得と、軍事的に利用することは全く別です。そこには主権の問題があり、簡単にできるわけがない。非常に恐ろしいことが起きているかのように書かれていますが、実際は違います。このような事例は、ほかにもたくさんあります。
■批判と悪口の混同 「売れること」が正義になる
――メディアには批判精神が必要だとよく言われます。
批判精神を持つことと、最初から「結論ありき」でネガティブに報じることは、全く違います。批判は悪口になってはいけない。その線を、今の日本メディアは完全に踏み越えたと思っています。
日本メディアの報道通りなら、中国はもう100回ぐらい崩壊しているはずです。いつも悪い、いつも中国がダメだ、いつも失敗している、そういう報道ばかりで、たまに中国の発展を取り上げても、最後には必ず「中国の思惑どおりにはいきません」と締めくくるので、今は逆に、恥ずかしくないのかなと思います。
――そうした報道が多く行われる背景について、富坂さんはどのように分析していますか。
日本のメディアは、おおむね反響があるものを「良いもの」だと考えます。テレビであれば、数字(視聴率)が取れるものがよいものとなる。つまり、内容が正しいかどうかよりも、受けたか、数字が取れたか、売れたか。この三つの要素で成り立っています。
売れなければ正義ではない。正しさは市場が決めるんです。残念なことに、売れない言論は消えていきます。
私も講演などで、「中国はいつ崩壊するんですか」といきなり聞かれることがあります。「崩壊しませんよ」と答えても、そういう話を聞きたくない人は少ない。そうなると、市場の中で私の声が大きくなることはありません。
加えて、記者が中国で取材しにくいという不満もあります。現場の記者にも、中国に対して攻撃的になっている面もあるのではないかと思います。いろんな要素が重なり合って、今の状況ができているのだと思います。
■世論はメディアの通信簿 視聴率優先のあり方に疑問
投票用紙の集計を準備する選挙管理委員会の職員(2026年2月8日、東京都、写真:CFP)
――国民感情に関する世論調査について伺います。ここ数年の調査では、中国に対する印象を「良くない」と答える日本人が8~9割に上っています。こうした状況をどう見ていますか。メディアが拍車をかけているとお考えですか。
メディアの影響は非常に大きいと思います。同時に、昨夏の参院選あたりから、かつては見られなかったような政党が台頭し、一定の支持を集めるようになりました。これは社会の変化を示すものです。
私が驚いたのは、多くのテレビキャスターが、そうした政党の党首に対して、まるで自分たちが正義の味方であるかのように攻撃的な姿勢で臨んでいたことです。そこに大きな違和感を覚えました。
彼らは、そうした状況を作り出したのが自分たちであることを自覚していません。世論という「製品」を作っているのはメディアです。だからこそ、メディアには「製造物責任」があります。奇妙な政党が台頭したのも、結局はメディアの責任です。世論の変化の半分は、メディア自身の責任だと考えていますし、少なくとも私にはそういう自覚があります。
対中好感度がこれほど悪化しているという結果は、まさにメディアの通信簿であり、成績表なのです。
高市早苗首相の選挙演説(2026年1月29日、兵庫県姫路市、写真:CFP)
――メディアは、自らの責任の重さを自覚すべきだという訴えに聞こえます。
例えばテレビであれば、実際、何が正しいのかを考えて番組を作ろうという姿勢が、少しも感じられません。朝に何かが起こると、どの話題が視聴率を取れるか、他番組に負けないかという基準だけで判断しているように見えます。
私自身もテレビ局に呼ばれた際、午後になって「別の話題の方が視聴率を取れる」と判断され、「申し訳ないが、別の話題になったので帰ってください。この話題はなしです」と言われたことが何度かあります。専門家を呼んでおきながら、視聴率のために切り捨てる。これが、今の日本メディアの実態なのです。
(つづく)
【関連記事】
ジャーナリスト・富坂聰氏に聞く(上)「天津飯」のような“日本製の中国像”に警鐘
◆ ◆
記事へのご意見・ご感想は、nihao2180@cri.com.cnまで。件名に【CRIインタビュー係りまで】と記入してください。お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号 中央広播電視総台亜非中心日語部】宛てにお送りください。スマートフォン用アプリ【KANKAN】の【アカウント一覧】にある「KANKANインタビュー」からも直接投稿できます。ダウンロードは下のQRコードから。

更多精彩内容请到 KANKAN 查看
