サプライチェーン博と日本企業~AGC中国総代表・湯山空樹氏「中国との『共創』の時代が始まっている」

KANKANインタビュー

「世界をつなぎ 共に未来をつくる」――先日閉幕した第4回中国国際サプライチェーン促進博覧会(サプライチェーン博)では、このテーマが単なるイベントの理念にとどまらず、多国籍企業の中国戦略そのものを映し出していた。

第1回から4年連続で出展してきた日本の素材大手AGCも、その一社だ。同社が今回発信したメッセージは明確である。AGCのグローバルサプライチェーンにおいて、中国は巨大な市場であるだけでなく、技術を実装する場であり、さらには第三国市場を開拓するための大きな可能性を秘めたパートナーだということだ。

■新たなパートナーとの出会いを求め、4年連続で出展

建築・自動車用ガラス、電子ディスプレイ材料、フッ素化学、ライフサイエンスなど、多角的に事業を展開するAGCだが、日本以外で全事業セグメントを展開している国は、中国だけだという。

2026年6月現在、中国には14の現地法人を置き、従業員数は約6,000人に上る。AGC執行役員・中国総代表の湯山空樹氏は、CGTNのインタビューで、中国事業における自社の役割を次のように語った。

「AGCはサプライチェーンの川上に位置する素材メーカーです。技術を持っているだけでは、事業は始まりません。その技術をどう活用し、どのように用途開発を行うかがカギとなります。そのためには、パートナーとの協力が不可欠です」

この「協力」を重視する姿勢が、サプライチェーン博への連続出展の原動力となっている。

今回のブースでは、電子部材、ガラス、化学品といった分野を横断する技術を展示した。EVや無人タクシー、データセンター、ITインフラの発展など、中国市場で急速に広がるニーズを見据えた提案が中心となっている。

「柔らかいものから、薄くて硬いものまで、さらに紫外線や電磁波を通さないものまで、AGCはお客様のニーズに応じて提供することができます」

湯山氏にとって、サプライチェーン博は自社技術を披露するショーウィンドウであると同時に、その技術を最大限に生かせるパートナーと出会う場でもある。

「将来的には、中国でつくるという道もあるかもしれません」

展示会での出会いを、共同開発や現地生産の可能性へとつなげていく。その視線は、すでに次の段階に向けられている。

■中国抜きには語れないサプライチェーン

4年連続で出展してきた湯山氏は、会場の変化も実感しているという。

当初は、自社製品や技術の紹介に終始する企業が多かった。しかし近年は、「自社の技術をどう活用して中国社会に貢献するか」「中国を起点に、海外へどのような価値を届けるか」といった、広い視野をもって出展する企業が増えているという。

「一社だけで取り組むのではなく、業界全体、あるいは産業サプライチェーン全体で連携していこうという空気に変わってきています」

こうした変化の背景として、湯山氏は中国の総合力を挙げる。

「中国には、事業を拡大するヒト、モノ、カネ、さらに技術そろっています」

中国は短期間で、多くの分野の技術を世界トップレベルへ引き上げてきた。湯山氏が特に強調するのが、その開発・実装の速さ、いわゆる「チャイナ・スピード」だ。

「中国では、技術をつくり上げるスピードがとても速い。今、サプライチェーンを語る上で、中国抜きには考えられません」

湯山氏が語る「協力」は、日本と中国の二国間に限られない。中国企業の海外進出が加速する中、中国パートナーと手を携え、第三国市場を開拓する可能性にも目を向けている。

■「共創」の時代がすでに始まっている

「多様な素材で、新たな質の生産力を共に創出する」――今回、AGCがサプライチェーン博で掲げたテーマだ。

これは、中国が推進する「質の高い発展」というマクロ経済の方向性とも重なる。ガラス、電子、化学、セラミックス、グリーン水素など、AGCが強みを持つ技術分野は、中国が力を入れるデータセンターやITインフラの整備とも親和性が高い。

湯山氏は、中国の今期五カ年計画の方向性についても期待を示す。

「『第15次五カ年計画』は、私たちのためにあるのではないかと思えるほどです」

一方、中国市場では近年、一部の業界で「内巻」と呼ばれる過度な競争や消耗戦が問題視されている。これについて湯山氏は、中国政府が産業の健全な発展を促すための政策を打ち出していることに注目し、その動きを前向きに評価する。

例えば自動車業界では、市場環境のルール化が進むことで、サプライヤーである外資系企業にとっても、より安定した事業環境が整いつつあるという。

競争そのものは技術を磨き上げる上で重要だ。しかし、これからの事業の進め方は、競争だけでは語れない。

「一社だけでは限界があります。中国企業と組めば、開発のサイクルを短縮できます。場合によっては、より良いものを中国や世界に届けられるかもしれません」

「競争するだけでなく、パートナーをつくり、一緒に協力していく。そういう意味での『共創』の時代が、すでに始まっています」

◆ ◆

一社単独の競争から、連携によるイノベーションへ。サプライチェーン博におけるAGCの姿勢は、日本の先端製造業が中国市場を単なる販売先ではなく、技術開発や事業創出を共に進めるパートナーとして捉え始めていることを示している。

不確実性が増すグローバル経済の中で、中国のサプライチェーンが持つ確実性とポテンシャルは、多国籍企業にとって、今後ますます重要な戦略資源となりそうだ。

(取材:王小燕、陳木月、梁恵  校正:梅田謙)

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