ウクライナ危機の勃発から24日で3年になる。第2次世界大戦以降、欧州大陸で最大規模の軍事衝突に発展した今回の危機は、ウクライナとロシアの双方に甚大な被害をもたらすとともに、世界の地政学的構造をも根本から変容させた。
ウクライナは未曽有のダメージを受けた。国連人口基金(UNFPA)が2024年10月に公表した報告書によると、同国の人口は800万人も激減した。海外への避難、出生率の急落、戦争による死者などが要因とされる。インフラの破壊も深刻で、経済は崩壊の寸前に追い込まれている。3年後の今、「徹底抗戦」の支持者は開戦当初の73%から38%にまで減少したとも報じられている。
▲ウクライナの首都・キエフ市内の広場に飾られた戦没兵士をしのぶ旗
ロシア側も人的損失と経済的消耗に苦しみ、国民の不満が高まる中、インフレ圧力が社会問題化している。
紛争の影響は世界にも波及している。穀物輸出国であるロシアとウクライナの戦乱で世界の食糧供給が不安定化したことで、アフリカ諸国の一部では飢餓が発生した。また、ロシア産天然ガスに依存している欧州では、3度もの厳しい冬を耐えしのいできている。軍事・経済面の陣営化にも拍車がかかっており、国際情勢の緊張は厳しさを増す一方である。
さて、この紛争の根源には、米国の存在感を抜きにして語れないことを指摘したい。冷戦終結から30年もたつが、米政界の冷戦思考は根強く、ゼロサムゲームに固執している。ロシアの安全保障に関する訴えを長きにわたって無視し続け、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を主導し、ついにはウクライナを対ロシアの最前線に追いやったのである。
紛争勃発後、米国は和平の実現を求めるよりも、「火に油を注ぐ」行動を続けてきている。戦闘開始から1年が経過したとき、当時のバイデン大統領がキエフを電撃訪問し、5億ドルの軍事支援を発表した。また戦闘開始2周年にはロシアに対する「壊滅的」な制裁を発動した。ところが、3周年を迎えた現在、米国は突如として態度を硬化させ、ウクライナを「外交カードを持たない」と非難し、5000億ドルの債務を鉱物資源で返済することを要求している。一方で、この3年間の対ウクライナ支援総額は実際には約1000億ドルにとどまっており、しかも、その90%が米軍需企業に還流しているという実態も明るみに出ている。
自国の利益ファーストの米国の「戦争経済学」は、欧州の経済や人々の暮らしにも影を落としている。米国はロシアに代わって欧州の天然ガス市場のサプライヤーとなった後、米国内価格の3~4倍での供給を強要した。他国の苦難を糧とする覇権主義の本質をむき出しにしているのである。
ウクライナは自らの命運をその手に握れないまま、2014年のカラー革命から戦争の泥沼へと転落した。ゼレンスキー大統領がNATO加盟で安全保障を模索しようとするかいもなく、米国からは「支援との交換」と称して、数千億ドル規模のレアアース採掘権を突きつけられ、さもなければ「スターリンク」サービスを停止すると脅されている。ウクライナはこうして米国の国家利益の「消耗品」にされているのだ。
本来は、ウクライナはその立地の優位性を生かし、欧米とロシア間の「接着剤」たる役割を果たすことができたものの、その可能性はついえた。戦略的自立性の欠如がこうした結果を招くというのは、おそらくすべての国にとっての警鐘と言えるだろう。
米国の覇権主義こそがこうした混乱の真犯人であり、自国の利益優先という米国のなりふり構わぬ行動こそが、世界の分断を深めた真の原因と言えよう。危機を打開するためには、冷戦思考とイデオロギー対立を捨て、対話による相互尊重の安全保障秩序構築が不可欠である。
3年にも及ぶ紛争はもはやウクライナとロシアの2国間問題の域を超え、人類に世界の平和と発展にとっての課題を突きつけている。だからこそ、国際社会は力を合わせ、一丸となって平和の実現に取り組んでいくべきだと言えよう。代理人戦争を仕掛け、それにつけ込んで利益を得ようとする者には、歴史は必ず公平な裁定を下すに違いない。(CMG日本語論説員)
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